情報センターISIS(イシス)名古屋

2.イシス名古屋開設にあたって

昨年の秋、私たちの事務所に一本の電話がありました。私はその電話を取り一人の三十代前半の若者の相談に耳を傾けました。話の内容は次のようなものでし た。「そちらでは仕事の紹介はしていただけるんでしょうか?」「残念ながら紹介はしてないんですよ。ジョブトレーニングの仕事体験はありますけど」と、私 が答えると若者は深いため息をついて「そうですか」とがっかりした様子の後で「実は僕ホームレスになるかもしれないんです」とのこと。彼は明日7回目の会 社の面接試験があり、その月にはすでに6回会社に面接に行き就職ができなかったようです。彼の住んでいるアパートの家賃も3ヶ月滞納していました。20代 はいろいろなアルバイトをしたり、フリーターとして過ごしたようです。電話からは、彼の働きたいという意欲は強く感じました。いざ就職という事になると 30代に入ってはとても厳しいものがあったのです。「ホームレスになりそうなんです」という彼の悲痛な叫び声が頭に残りました。今、その若者はどうしてい るんだろうか。そのときにどんな助言ができたんだろうか。深く考えこんでしまいました。

思えば京都の地で家族会がひらかれた時、一人の母親が涙ながらにこんな話をしてくれました。子どもの状態に不安を感じどうしても辛くなったので、保健所に 行き子どもの状態を話しどうしたらいいんだろうかと相談すると「わかりました。それでは次の水曜日に担当の先生が来られますので先生にご相談されてはどう でしょうか」と言われもう一度水曜日に出かけた時に「本人を連れてこなければどうしようもないな」と言われた時何とも言えない無力感漂う激しいショックを 受けたようです。この母親同様に多くの人がシステム的な対応をされて傷ついたのです。当時、社会的ひきこもりという青年達のあり方が社会的な認識が困難で あったことも事実です。仕方がないと言えば致し方ありません。しかし多くの母親達が傷ついたことも事実です。親の会ではお互いの辛い話に耳を傾けお互いを 支えあったものです。もし保健所に先の母親が訪ねた時に、相談を聞いた後で対応した事務員の人が「10年もひきこもっていたら大変でしたね」「暴力はな かったですか?」「私も少し忙しいんですけど10分程度でしたら時間があります。もう少しお母さんの話を聞かせてください」とか対応されたら母親も少しは 胸の苦しさを話して心が癒されたに違いありません。私たちが作り上げた社会にシステムがあって癒しが無いのに多くの親たちがはじめて気がついたのです。こ うして家族会は社会の中で癒しの場のコミュニティーとして今日まで存続し続けています。イシス名古屋を開設するにあたって私が本当に心から望んでいる活動 は次のようなものです。
「僕ホームレスになるかもしれないんです」と、もう一度そんな若者の声を聞いたら、「すぐにおいでよ、家族会の協力で作った若年者ホームレスを支援する家 があるので良かったら来ないかな、一緒に鍋を囲みながら君の話を聞きたいね」と伝えたいです。社会に生きづらさを感じた若者とひとときを過ごし、癒しあう ことができれば設立に参加した一人としてこのうえない喜びです。

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